採血や点滴確保で悩んでるあなたへ

  1. なぜ悩むか
  2. どうすれば良いのか

2-1ターゲット血管探し

2-1いよいよ穿刺

  1. 昔の私はどうだったか
  2. 今の私

1.なぜ悩むか

「失敗した恐怖心から自信を無くす」

これに尽きます。

最初は先輩に見守られながらの採血や点滴確保。

緊張しないほうがおかしい。

その緊張は当然患者さんにも伝播し、患者さんの熱い視線と重圧の中、針を刺すなんて、普通の感覚を持ち合わせた人間なら、自分がワゴってしまいます(迷走神経反射で意識が飛びそうになることです)

そして当然失敗。

先輩からはため息をつけられ、患者さんからは「痛い痛い」と言われ、こんな仕打ち誰が耐えられますか?せっかく国家試験通ったのに、せっかく看護師になったのに・・・つらすぎる。採血なんて得意な人や好きな人がやればいいのに・・・。

正直、そう思っても仕方ありません。

でも、実際の現場ではそうは言ってられません。

入院を受ければすぐに点滴確保。病棟夜勤すれば早朝に何十人もの採血。救急外来なんて、ストレッチャーに乗った状態の悪い患者さんの採血と同時に点滴確保。また、採血室配属になった日には、何百人の血管と立ち向かわなくてはいけません。

なので、看護師になったら、日々の看護記録やバイタル測定、病態の理解も重要な任務になりますが、「採血と点滴確保」の苦手意識は早い段階で克服しておいた方が、これからの看護人生の楽しさが違います。

2.どうすれば良いのか

2-1ターゲット血管探し

まずはどの血管に刺すか見極めることです。

その前に、駆血帯をしましょう。

余談ですが、私は太い駆血帯が好きです。(動画で使用してるやつ)

これは皮膚の設置面積が広いので、どんなにきつく駆血しても患者さんは痛がりません。駆血帯のクリップも差込型なので、患者さんの皮膚を挟むリスクもほぼ無いからです。

いわいるアメゴムに金属のピンチがついたやつは、患者さんの皮膚を挟みそうになるし、アメゴムは細いので結構な確率で患者さんは痛がります。なので、10年くらい前からアメゴムは使わなくなりました。やむを得ずそれしか無い場合は患者さんのお洋服の上からアメゴムを巻いています。

しっかり駆血ができないと、たとえ良い血管だとしても刺せませんので、「駆血帯選び」と「しっかり駆血する」ということは、採血を成功させるためには重要事項ですね。

ということで本題に戻ります。

良い血管(刺しやすい血管)の条件は、①ぷっくりしていて張りがある、②走行が真っ直ぐである、の2点です。最初はこの条件を満たす血管を探しましょう。あれば迷わずそれを選択します。

血管の場所ですが、痛覚は末梢になればなるほど痛く感じます。ですので、最初は正中付近から探します。なければ徐々に末梢側に範囲を広げていきましょう。手の甲や、手首付近は、とおおおおおおおっても痛いので、ここは最終手段の部位だと思って下さい。

(痛い上に失敗したら、患者さんも自分もダメージでかいので)

2-2いよいよ穿刺

ターゲット血管が決まったら、次はいよいよ穿刺です。

血管探しにもたついていると、駆血しすぎて患者さんが痛みを訴えることがありますので、つらそうであれば一度駆血帯を外しましょう。再度駆血すれば同じ部位に血管が張ってきますので、どこの部位だったかは忘れないように。(ちなみに、私の愛用している太い駆血帯では、駆血し過ぎで患者さんは痛がることは少ないです)

また脱線しました。話を戻します。

穿刺時には、「ターゲット血管を逃さないように固定する」

どういうことかって?皮膚の下に血管はありますので、グニョグニョしている皮膚の上から針を刺しても血管は逃げてしまいます。なので、皮膚に張りをもたせて、親指で血管を抑えます。この時皮膚の張りが甘ければ、人指指や中指を駆使して皮膚を引っ張ることが重要です。そんなに指を駆使したらツリそう?ですよね(^_^;)なので、私は腕の下に毎回クッションを敷いています。以前はハンドタオルを丸めて使用していましたが、使い回すのに感染の問題もあり、今は採血用クッション(ミニ丸)を使用しています。動画で使用している青色のクッションがミニ丸です。

次に、ターゲット血管に対して、自分が正面に立ちます。患者さんの正面でなく、血管の正面です。ここ大事です。血管が斜めに走行していたら、その斜めに対して自分が垂直になるように立つんです。

この作法を怠ると、高確率で失敗します。

自分が動かず、手先だけ、針先だけ斜めにして穿刺しようとすると、一瞬は血管に入るがすぐに漏れてしまう、途中から逆血がなくなる・・結局振り出しに戻ります。いや、第一選択のターゲット血管を潰したのだから、振り出しより事態は悪くなります。

大事なので繰り返します。

「ターゲット血管に対して、自分が正面に立つ」

これが今日の一番伝えたかったことです。

当たり前じゃん、看護学校でも習ったし、気にしてなかったけど普段からそうしてるよ。

そういう方は基本が染み付いているので問題ありません。

ただ、こういうことって忘れガチなんです。

日々の業務に追われ、患者さんの熱い眼差しを受けながらの採血や血管確保は、かなりの精神的にプレッシャーです。そのプレッシャーのせいで、正常な判断ができなくなり、段々とアクロバティックな体勢になってしまいます。そして失敗。

ですので、今一度、「穿刺は血管の正面に立つ」を成功の呪文だと信じてやってみて下さい。

あとは、採血には欠かせない、駆血帯と採血用クッション(ミニ丸)の準備です。自分のお気に入りの駆血帯とマイクッションがあると、いつでもどこでも採血したくなります♪

3.昔の私はどうだったか

さて、ここまで採血に熱く語るなら、さぞ血管フェチなんだろうと思われたかも知れません。いやいや、そんなことはありません。私は看護師歴20年以上になりますが、それはそれは恥ずかしい黒歴史もあります。ちょっと聞いて下さい。

新人時代は大学病院勤務でしたので、当時は採血や点滴確保はすべて研修医の先生の仕事でした。そう、看護師はただ薬の準備をするだけ。物品準備も医師に丸投げでした。なので、失敗した先生に対して、共感なんてできないし、何ならこの先生は採血が上手、下手・・なんて失礼極まりない判断すらしてました。

そんな私が初めての転職。大学病院から市中病院に就職しました。ここからが悲劇の始まりです。市中病院では、(当たり前ですが)点滴確保も採血も、全部看護師が行うのです。しかし、新人時代を大学病院で過ごし、人生で一度も患者さんに針を刺したことがない私にとって、それはそれは苦行の幕開けでした。「大学病院では何してたの?」「ICU出身でも、市中病院では即戦力にならないね」「採血に困ったら上手い人に頼んだら?」等々・・経験者として就職したのに、まさか採血と血管確保でこんな羞恥に晒せるとは予想もしていませんでした。

甘かった・・・なんてぬるま湯な大学病院時代を過ごしてしまったのだろう。あの時、研修医の先生の手技を見ておけば良かった・・罰が当たったんだ。新人時代の自分を悔やみました。

でも、ここは市中病院。「採血できないから辞めます」なんて口が裂けても言えない。これは採血スキルを身につけるしか他に方法が無い!そう覚悟を決めました。

市中病院では、ICUや循環器病棟勤務をしましたが、採血と点滴スキルが一気に上達したのは循環器病棟のカテ番(カテーテル室に患者さんを出し入れする当番)時代でした。ここでは、毎朝9:00に患者さんが入院し、9:30にカテ室に入室です。アナムネ取って着替えさせて点滴採ってカテ出しまで25分。5分でカテ室に移動。カテ出しした15分後には次の患者さんのカテ出し。毎日この繰り返し。

さすがに一発で穿刺を決めないと、カテ室で待っている先生やスタッフにも影響が出てしまいます。何よりこのプレッシャーを患者さんに悟られないように穿刺するのが大変でした。患者さんはただでさえ心カテ入院で緊張してるのに、点滴採る看護師がそれ以上に緊張していては、看護師としてプロとは言えません。

あの手この手で一発で穿刺を目指しました。まずは温タオル握り方式。清拭用の温かいタオルを患者さんに握ってもらいます。駆血帯を巻くとあら不思議。血管がぷっくり浮き出てきます。この温タオルには数えられないくらい助けられました。

このカテ番時代に、かなり心が鍛えられ、一発穿刺の感覚が身についてきました。

次はカテ室勤務になりました。と言っても、カテが無い時はCT室やMRI室で血管確保です。さて、ここで困りました。温タオルが無い・・。ここは検査室、そんなものがある訳ありません。その上、放射線技師さんの監視付き。カテ番で鍛えられた心も、一瞬にして崩れ落ちました。そしてベテラン看護師の点滴確保のうまいこといまいこと!そうそう、このCT室で、今使用している太い駆血帯と出会いました。

ここでは恥を偲んでベテラン看護師にコツを聞きまくります。また、ベテラン看護師の穿刺もずっとガン見しました。技術を見て盗んでやるぞ作戦です。だいぶ目が鍛えられました。

カテのある日はカテ室勤務です。

カテ室は病棟で点滴確保してくるから楽ちん。採血も無いし、やっほー!なんて思っていました。・・そうです。みなさんもお気づきでしょう。そんなことは無いんです。入室してきたけど点滴が漏れてる。カテ中に急変したから、もう一本点滴を取らなくてはいけない。しかも、ここはカテ室で、患者さんは清潔なおいふに包まれた状態です。でも自分が点滴確保しないと患者さん助からない!

今までの看護師人生において、カテ室での点滴確保が一番ハードルが高かった・・。だって、自分しか看護師いないんです。先生はカテ中だし、患者さんは狭いカテ台に乗ってる状態だし、血管の正面に立ちたくても立てないじゃん(;_;)でも泣いてる場合ではありません。どうにか自分の体勢をできるだけ正面に近づけて(下半身は無理でもせめて視線だけは正面に)、そして皮膚をしっかり伸展させてためらうことなく刺します。

このためらいが失敗の要因になりますので、穿刺時は全神経を集中させます。そして確保できたら、すぐにルートをつないで、抜けないようにテープでしっかり固定です。固定が甘く抜けてしまったら、それこそ悲劇です。ストレート固定で水にも強いテープでガッチリ止めます。カテ中はこれで良いのです。

4.今の私

長らく黒歴史にお付き合い下さり感謝致します。

そんな黒歴史を経験したからこそ、若手看護師さんたちには採血や点滴確保で苦労して欲しくない、患者さんも痛くなく一発で決めてもらいたい、そう思うようになりました。

技術にはサポートする道具も必要です。

採血用のクッションでなにか良い商品は無いか?無かったので今回登場した採血用クッション(ミニ丸)を開発しました。採血に苦労したからこそ必要に迫られて開発した商品です。

マイクッションとして購入してもヨシ、所属してるしている施設に買ってもらうのもヨシ、とにかくお気に入りの道具があると、日々の業務が楽しくなります。

ぜひ、採血や血管確保で悩んでいる看護師さんのお役に立てれば嬉しいです(*^^*)

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