「高純度EPAの有効性」

名古屋大学の石井先生の講演に参加してきました。PCIをしてかえって心筋障害(周術期MI)が発生する原因として、PCI時に側枝を潰している可能性、プラークが末梢に流れて根詰まりを起こしている可能性を指摘されていました。とくにeGFR40以下のCKD患者さんは、PCI時のMI発症が多く、その背景は微小循環障害が起きやすいということだそうです。「スタチンのみ」vs「スタチン+高純度EPA」では、後者がPCI中のMIは少ないとのこと。ACS患者は早期にEPAを内服することで、死亡率6割減だそうです。石井先生のご施設では、ACS患者にはPCI直後からEPA内服開始すると言っていました。また、日本人は魚をよく食べるのでEPA1800 mg/日で良いと言っていましたが、若年層(魚を食べる量が少ない層)になればEPA/AA比が低下する傾向があるので、今後は増量も検討していかないといけないかもと言っていました。たしかに、私はEPA/AA比を測定したことがありませんが、魚は月に何回食べたかな?程度です。とりあえず、サバ缶食べて補充しようと思いました。

<REDUCE-IT研究を紹介されておりました。スタチン服用しているがTG中性脂肪が高値の症例でEPAを併用することでCVイベントが減少すると。フィブラートではCVイベント抑制は示せなかった経緯があるもののEPA併用ではそれが認められたとのことでした。ただ、そのEPA投与量は4000mgであり、日本における通常使用量 1800mgよりははるかに多い投与量です。>

「心臓リハビリテーション」

群馬県立心臓血管センターの安達仁先生の講演です。安達仁先生は、私の心カテ看護の原点におられる先生で、カテ前オリエンテーションや患者の生活指導はすべて安達先生の本から学び取り入れました。個人的にとても楽しみにしていた講演です。

包括的心臓リハビリテーションとは、狭心症患者の場合、「PCI or CABG or 心臓リハビリテーション」がどうか変わるかカンファレンスすることが重要と。ハートチームにはインターベンションに関わらない医師の存在も重要であることを確認されておりました。血管内でのカテ操作(とくにワイヤリング)は、動脈硬化生成を誘発することがあるため、PCIを第一選択にしないほうが良いと言っていました。第一部の石井先生も、PCIによって心機能低下するリスクがあることを言ってましたね。

安達先生は、「心臓リハビリテーションは長い年月(1から5年)かかるが、しっかりと心臓リハビリテーションを実施すれば、血管は太くなる!」と力強く講演されていました。そのためには、「患者さんをその気持ちにさせるかどうか」が重要で、「何もしなければあなたの血管はそのままですよ」と言うと、患者さんは「5年かかってもリハビリしてがんばります!」と言うそうです。狭心症や末梢動脈疾患は、全て生活習慣の問題が背景にあります。特に食後高血糖を改善する運動が重要で、「食後、体をリラックスさせ過ぎないこと」が大切とのこと。食後食器洗いをする、さもなくば立っている・・。とにかく食後すぐ寝るのは禁忌だそうです。また、食後8時間は中性脂肪は高いので、できれば夕食は19時までには摂取したい。そうすると、明け方には空腹になり中性脂肪が低下し異所性脂肪が消費されるというのです。空腹時間を作らないと異所性脂肪は減らないそうです。しかし、夕食を19時に摂取しても、23時にシャインマスカット一粒でも食べると、空腹時間ができないまま朝食になってしまうというのです・・これは難しい。夜中にクッキー食べながらこの感想を書いているなんて口が裂けても言えません。

ASO/PADは他の動脈硬化疾患を併発しやすいと。ACSの再発予防や冠動脈病変進展抑制には、虚血閾値以下で運動を実施することが鉄則ですが、ASOに関しては、虚血を生じさせて側副血行路の発達を促すことが重要だそうです。歩いて痛くなったら休む→痛くなるまで歩く。疼痛をコントロールしながら実施するのがポイントとのこと。ASO患者さんの指導には、きちんとこの事を説明しないといけませんね。

外来リハビリテーションを継続していくには沢山の課題があります。病院までの交通手段(送ってくれる家族問題)、患者本人が仕事で来れない問題、リハビリスタッフ不足問題・・でも、入院中にしっかりと教育することで、自宅でもリハビリは可能だと安達先生は言っていました。すべての患者が外来リハビリ可能な状況ではないので、入院中の患者教育の重要性と、外来時での声かけ等のフォローが患者を支えるのではないかと思いました。

安達先生の心臓リハビリテーションの講演を聞き、前施設での心カテオリエンテーションをしみじみ思い出しました。二泊三日の入院で、しっかりと介入することで患者さんに意識変化が起こり禁煙率76%になったのはとても嬉しかったです。「食事・服薬・運動・禁煙」このテーマは看護師がワクワクしてくる課題が沢山あります。前施設でのオリエンテーションを多くの施設に導入してもらうため、論文化したい・・と思い始めました。